1. TOP
  2. 牧場人生(3)
  3. 大国の闇と光

大国の闇と光

アメリカを嫌う人は多い。嫌米感情の理由として、人種差別がいまだに解消されないことや、厳しい競争の世界、優勝劣敗の格差社会、犯罪の増加と治安の悪さ、不可解な銃撃事件や離婚率の増加。。。。。「アメリカは超大国かも知れないが、確実に病んでいる」という認識は誰しも感じるだろう。にも関わらず、病めるアメリカ社会に関心をもつのは、矛盾した国であり、米国の現実はいつか日本も行きつく未来であることから目が離せないことだが、最大の理由はやはり過去の過ちは認め、常に「より完璧な合衆国」に向けて力強く胎動している国家だからだろう。

私はアメリカの、挑戦的でドンキホーテな理想主義が好きだ。その理想主義を世界のリーダーとして発信しながら、多くの矛盾を抱えているという現実や、競争の激しさ、光の眩しさと影の濃さというそう言った距離に、ナイーヴな?日本人はついていけないようである。若い頃自由と民主主義が機能しているアメリカに何時かは行って見たいと思っていた私だったが、現実的には既にこの国に住んで35年の歳月が経ってしまった。この国の病根は深く闇もデカイが、そのぶん大きく輝く光もあることを忘れてはならない。この闇と光の深さと大きさ、そして矛盾している部分が私にとってはたまらない魅力なのである。

米国には誰にも平等な機会が与えられている、一生懸命努力すれば必ず成功を手にすることが出来るという“アメリカンドリーム”の神話がある。つまり名門の家庭に生まれたとか莫大な財産を相続したとかでなく、努力と才能で自分が何をしたか、これから何をするかで全てが決まるという精神である。「問題にされるのは君に何が出来るかだ。」それを信じて世界中から多くの人達が夢と希望を携えてこの国にやって来る。若き日の私もそうやって太平洋を渡って来た一人である。

私自身で描いてきたドリームは一般的なアメリカンドリームとは若干異なっていたかも知れないが、自分では夢の実現を果たしたと思っているし、かって希望と期待を抱いて新天地に移ってきたことが正しい決定であったことを確信している。日本ではおよそ出来なかったであろう数々のことがこの国で実現出来たことを私は誇りに思うし、何物をも包み込む大きな懐を持ったこの国に感謝している。闇も光もあるからこそ常に明かりを求めて頑張ってきたことが幸運な結果を生んだとも思っている。

建国以来アメリカンドリームは米国文化の象徴となり、今尚多くの人がそれを信じているのである。しかし残念ながら現実の米国社会はこれとは殆ど逆の状況になりつつある。アメリカンドリームの中で最大の夢は経済的成功を手にすることだが、例えば白人と黒人の経済的不平等はそれが単なる神話(ウソ)に過ぎないことを示している。表向きは機会均等と言われているが両者の機会の不平等は依然として存在しているしそれ故に両者の平均年収や保有財産のギャップに繋がっているのである。結局どんな家庭に生まれたか、どれだけの財産を相続したかが相変わらず非常に重要な社会なのである。

富裕層と貧困層の格差は広がる一方である。今のアメリカは金持ちばかりがどんどん豊かになる国となりつつある。どうしてこういう社会になってきたのかの原因は幾つもある。まず(第一)にグローバリゼーション。世界中を対象に雇用のアウトソーシング行われる為アメリカ国内の賃金水準が世界の安い額に引き下げられる傾向がある。(第二)に近年小さな政府を目指してきたことによる規制緩和や富裕層の減税による競争原理の拡大が挙げられる。(第三)は株価至上主義である。株価を上げることを第一の目的としレイオフを厭わない経営姿勢が蔓延っているのも原因である。(第四)は医療費負担の問題がある。アメリカは先進国で唯一国民皆保険制度がない。個人の破産のうち半数以上の原因は医療費負担だと言われこれはカードローンによる破産よりも多い。(第五)は個人主義の浸透である。成功も失敗も個人の努力という考え方が徹底している。この個人主義と併せて資本主義の極度に発達した形が弱肉強食、優勝劣敗、適者生存の社会を産み出したのは紛れもない。

ここでは政治家も国民に政策を訴える時頻繁にアメリカンドリームを口にする。つい最近ではかのオバマ大統領である。彼こそは稀有なドリーム体現者にもかかわらずこの言葉は多くのアメリカ人を魅了するのである。いまだこのアメリカンドリームの神話が崩れることがないのは何故か? それは主要メディアが50万人とか100万人に一人くらいの割合で、貧しい国からやってきた移民や貧しい家庭に育った米国市民が夢中で働いてアメリカンドリームを実現したという話をするからだろう。しかしその裏で何百万人もの貧しい人々が、どんなに一生懸命働いても貧困から抜け出せないでいるという事実は殆ど報道されていない。

日本にも本格的な格差社会の到来が告げられている。所謂ワーキングプワーの層がどんどん増えつつある。今のアメリカが近未来の日本の姿と思って多分間違いは無いだろう。一億総中流意識という謳い文句が懐かしい時代がもうすぐやって来るのではないか?!今の時代日本に住もうがアメリカに住もうが経済的な物差しだけで己の人生を測ろうとすると格差社会に対する被害者意識が醸成されやすい。かっての貧しい時代に生きた人達は不幸であったかというと、全くその逆であることが多いことも事実。<心の豊かさ> の論議こそがこれからなされなければならないと思う。

20110301-1

Follow me!