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アラ還の手習い

話は会社時代に遡るが、チョッとしたきっかけからパソコンにのめり込んだ。コンピューター先進国での会社経営、なくてはならぬものだったが、私はメカとかテクという横文字の略語を聞いただけで頭が混乱してくるような人間だった。だが来るべき時が来た。私を除いた全社員がパソコンを使うようになって暫くしたある日ITの責任者が私の所へ来て、そろそろパソコンを設置してもよろしいでしょうか、と言ってきた。しかし私は相変わらず拒み続けた。

経営会議などが始まるとみんなコンピューター用語を使ったり、売り上げや営業マンの成績、顧客との取引状況等、全てパソコンを通しての話を続けた。私は独り門外漢になりつつあり疎外感を感じたが、それでもいきがった。幹部が口を揃えて 「 ミスターももうパソコンを使ってもらわねば困ります。メールを使っての意志疎通さえ出来ませんからね。」 私は屁理屈で言い返した。「 おい、勘違いするなよ、俺の役目はコンピューターを使う連中を使うのが仕事だから、パソコンなんか必要ない。君達はもう内堀まで埋めたから落城寸前だと思っているだろうが、俺は篭城するよ。」 それを聞いたその場の全員が、こりゃダメだ、という顔をしたのである。

ある時配送センターへ商品の在庫を調べに行った。そこにベネズエラから来た若い社員がいたので彼に尋ねたら、急にパソコンの前に行ってあのわけの解らない端末を素早く叩いて、私が探がしていた商品の在庫をあっという間に見つけ教えてくれた。私のショックは尋常ではなかった。倉庫の棚まで足を運びやっとのことでその場所を見つけるとやおら商品を数え出し在庫数が解るという、昔の私がそこにいた。あの若者は英語もろくに喋れず恐らく高校すら出ていないだろう。なのに急に彼が私より数段も出来る人間に見えてきた。チクショウ、何故だ?!私は急に時代から取り残されていく惨めな自分を感じた。

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心は決まった。翌日朝一でIT責任者を呼びパソコンの設置を依頼した。そして基本的な操作の仕方と、後は絶対にしてはならないことだけを聞いて早速パソコンと対座した。いい加減な使い方をすると直ぐ壊れたり、記録が消えてしまうんではないかとの恐れがあったから、最初のうちは恐る恐るキーを叩いていたがそのうち少々のことでは全然問題のないことが解り、それからはもう無茶苦茶にキーを叩いた。試行錯誤をいや程繰り返した結果、気がついたら自分なりに殆どのことが出来るようになった。

メールはもちろんのこと、エクセル、ワード、も使えるようになった。日々の経営上の指数は殆どオンタイムで解る様になり、今までは下から上がってくる数字を待っていたのが急にパソコンの数字をもとに私がフレッシュな号令をかけ始めたので社員がみんな吃驚した。当たり前である。緊張感が一気に社内に走った。トップが直近の生きた数字を見ているということだけで、いい加減な仕事は出来ないという、目に見えない、いい意味でのプレッシャーとなった。勿論出張時はノートパソコンで仕事をしたから、全く24時間パソコンに操られているようなものだった。コンピューターを使うべき人間が気がついたら逆にコンピューターに使われている、そんな錯覚さえ起こすようになった。

現役を退いてからはそんなキャパも大きくスピードも速いパソコンは必要がなくなったので完全にノートパソコンに切り替えた。メールとインターネットでサーフ出来れば十分である。それでも見よう見まねでレベルアップを図った。新しいモノへの挑戦、アラ還の手習いである。完璧には程遠いがデジカメで取った写真も簡単なものは添付出来るようになった。スキャンのディバイスも取り付けそれも可能になった。そしてスカイプにも挑戦し、今では何とか交信出来るようになった。それもビデオ付きで。グローバルで散らばっている友人知人と何時間もそれも只で交信出来るなんて、20年前、いや10年前でさえこんな時代が来るのを誰が予測出来たであろうか?!

今では、パソコン無しでは生活出来ないとまでは言わないが、一日のなかでやることがない時の隙間を埋めてくれるものとしてこれほど重宝なものはない。必要な時だけテレビや新聞のお世話になるが後はパソコンの方が何かにつけ便利で手っ取り早い。世界のニュースも瞬時に入ってくるので、どんな田舎に住もうが現実世界との隔絶感はない。コンピューターが人類のライフスタイルまで変えてしまったと言っても過言ではあるまい。パソコンがなかったらSLの仲間達とも遭遇することもなかっただろうに。指を使い、投稿する為には頭も若干使うからボケ防止にもなろう。後はのめり込んで目を酷使しないよう心掛けていけば棺桶に入る寸前までお世話になりそうな気がする。

時々年配の方でコンピューターを気嫌い?している人達から質問される。その時は、かのIT責任者が私に言った言葉の受け売りをする。それは。。。。。

「コンピューターを車と思うこと。運転するのに難しい車の仕組みとかメカに詳しい必要など全くない。ただエンジンをかけアクセルを踏みハンドルを操作していけば車は走って行く。ヤバイと思ったらブレーキを踏めばよい。たまにはバックで車庫入れも必要だがゆっくりやれば良い。少々乱暴に扱っても車は故障しないから心配するな。壊れれば修理屋へ持って行けば直してくれる。よく考えてくれ、アメリカでは90歳のバアサンでも車の運転をしているんじゃないか。難しく考えるから億劫になる。試行錯誤、大いに結構。道は間違ったり迷いながら覚えるものさ。」

私のアラ還の手習いはエスカレートしている。やがて独自のブログを作成しようと目下勉強中である。